Jeff23 (SP23)

spiral-tribe
1992年のロンドン、ポルトベロ・ロードの遅い朝、カフェのテラス席(と呼べるほどのものでもないが…)から見る通りをNATO正規軍ドイツ歩兵のジャケットを着た長髪の男性が行き過ぎる。そこに陣取った殆どの人間はウェストロンドンの先端にあるレゲエやダブ、アシッドハウスのプロデューサーかプログレッシブロックのミュージシャン達で、前夜にはどこかで某かのレイブパーティーに参加して、陶酔の時空を過ごし、その快感の名残を持て余しているが、その口から言葉が漏れる。『あいつは、Spiral Tribeのメンバーだよ。』向かいのカフェに入ってカプチーノを注文する端正なドレッドヘアーの男の姿に皆の目が釘付けになる。ほかの男が言う。『連中は何人いるのかわからない。いくつものグループがパラレルに連動して活動するから、その実体も掴めない。』その間も皆の視線は男の動きを追う。『最近、サウスバンクでパーティーがあったらしいよ。』『この前はアイルランドからフィッシュガードの港についたメンバーは税関で素っ裸にされて検査を受けたそうだ….。』
Spiral Tribeについてはその噂が絶えないが、その実体を見切ることは不可能だった。闇の中で黒い渦巻きを顔から全身にペイントした男達の異形や、鉄のスクラップを組み合わせた奇怪な巨大オブジェのイメージが人々の会話の中を強烈なイメージで彷徨する。
そのコマーシャリズムとは全く縁の無い謎のテクノ集団はその時代の鋭い感性を持ったクリエイター達にとっても簡単には知り得ない最も不可思議なブリテンが時代を待って生みだし育んだ本当の”部族”だ。
彼らは政治的な影響力さえ有する特有な存在だった。
『今度はどこでレイブを開くのか?』多くの人々がその動向に耳をそばだてた。彼らの滲ませるスタイルが特異なだけで無く、その音楽性は常に斬新だった。
彼らは決して過去のレジェンドでは無い。現在もヨーロッパ大陸の各地に散開し、強靭な生命感を保ちながら、テクノ文化の先端を切り開いている。 (Words by Massa)

Jeff23

JEFF23 (SP23 / Berlin)
Jeff23は、1991年よりDJを始め、ギャングスターが仕切るロンドン市内のウェアハウスパーティーで経験を積み、
英国の多くのクラブイベントや地下パーティーで定期的にプレイした。
銃口で交渉するプロモーターとのディールにうんざりした彼は、セカンドサマーオブラヴ以降のUKフリーレイヴのシーンの中心で活動していた伝説のサウンドシステム、Spiral Tribeに加入し、精力的に活動する。
彼らの数千人規模のフリーレイヴやスクウォットパーティは、暗い世相を打ち破る反抗と自由の象徴として若者たちの熱狂的支持を獲得する一方、政府、警察からは「環境の平和を乱す」存在と見なされて法的、暴力的な弾圧を受けた。

加えて商業レイヴが乱立をはじめたUKから、1993年にSpiral Tribeはサウンドシステムとともにヨーロッパ大陸に移住。拠点を移しながらヨーロッパ全土にテクニバル等のフリーパーティのムーブメントを根付かせた。

Spiral Tribe

ブレイクビーツやレイヴから派生したハードコア、トライブ、ハードテックと呼ばれる音楽は、彼らのサウンドシステムから生まれた。彼自身も40以上のレコードリリースで知られている。
現在は、Spiral Tribeのメンバーたちで新たに設立したコレクティブ、SP23のメンバーとしてヨーロッパ全土で活動している。
サウンドはヒプノティックでダーク。唸り脈打つ圧倒的なエネルギーの奔流だ。
根を張り自生したテクノサウンドは、音楽メディアが提示するシーンの流行とは別次元のリアリティをもってダンサーの精神と身体をつき動かす。LIFE FORCE Sky Walk (2015年)出演に向けて、エクスクルーシブ・ミックスを提供してくれたので、是非聴いてほしい。

インタビュー @ ele-king
http://www.ele-king.net/columns/004569/
T SESSIONS 066 – JEFF23
https://soundcloud.com/t-sessions/t-sessions-066-jeff23
SP23
https://sp23.org/crew/